こんにちは、中の人(明治大学公共政策大学院教授の松浦正浩)です。

先日、国立社会保障・人口問題研究所(通称「社人研」)が『日本の地域別将来推計人口(令和5(2023)年推計)』を発表し、2050年の全国各地の人口を推計した結果が明らかになりました。

Misono2050も、2050年の浦和美園駅周辺地区の持続可能性(サステナビリティ)を高めるために活動していますので、2050年の人口は気になります。ということで、早速データを見てみました。

社人研の推計は、市区町村単位まで行われています。つまり緑区・岩槻区の単位まで結果が出ています。町丁目(例えば「美園1丁目」)といった詳細な推計は行っていません。ということで、緑区・岩槻区の結果を見てみましょう。

まず総人口ですが、緑区の2050年の人口は推計14万5千人で、なんと2020年に比べて1万7千人(13.2%)の人口増となります。対して岩槻区は2050年推計でちょうど約10万人で、1万1千人(▲10.2%)の人口減です。あくまで区全体の数字なので、浦和美園駅周辺地区のことを考えると、ちょっと違和感があるかもしれませんね。

全国では人口減少が続くこの時代に、緑区の13.2%増ってスゴイなと思い、全国各市区町村の人口増減率を計算してランキングしてみたところ・・・なんと緑区は全国第8位!やはり浦和美園駅周辺地区の開発の影響が大きいと思われます(※なお人口推計は個々の都市開発案件まで見ておらず、最近の人口移動のトレンドを基に推計しているので、将来の転入を過剰に見込んでいる可能性もあります)。

 

さて、年齢階級別の推計結果も見てみましょう。まずは緑区です。

全体を見ると、上のほうの高齢者で厚みが増しているのがわかると思います。年少人口(0~14歳)、生産年齢人口(15~64歳)、高齢者人口(65歳以上)でそれぞれ見てみましょう。

年少人口は実数としては3.7%減少しますが、あまり変化はありません。つまり保育所・幼稚園・小学校に対する需要は大きく変わらないということでしょう。ただし区全体でプラマイゼロという話で、地区単位で見ると、減るところと増えるところがあると推測されます。

生産年齢人口もほぼ全く変化しません。ただし2020年は40代に強いピークがありましたが、2050年は少し均された感じになります。

問題は高齢者人口です。2050年には4万7千人で、2020年から60.9%の増加となります。つまり、緑区の総人口が増えるとはいえ、その増分はすべてが高齢者なのです。構成比でみても、2020年に22.6%であったのが、2050年には32.2%、つまり約3人に1人が高齢者となります。もちろん現在、そして未来にはより一層、65歳以上でも元気に働いている方は増えているでしょうから、65歳以上を高齢者と定義するいまの分析のやり方が間違っているのかもしれませんが、いずれにせよ高年齢層の人口が増える、ということは間違いありません。なお、現在後期高齢者と言われる75歳以上の層で絞ってみると、2020年は14,789人、2050年推計で27,940人で、88.9%増となります。

岩槻区についても見てみましょう。

年少人口は19.2%の減少です。幼稚園や小学校などの施設に対する需要はそれだけ減っているということです。ただし、繰り返しになりますが、これは岩槻区全体の傾向であって、美園東では2050年に全く違う様子を見せているかもしれません。

生産年齢人口も同様に18.5%の減少です。2020年に存在した40台後半のピークが消えているのが目立ちます(2050年の図を見ると、その人たちが30年後に70代後半へと移行しているのが見て取れます)。

高齢者人口ですが、ここが緑区と大きく異なり、8.6%の増加にとどまっています。つまり病院や福祉サービスなどに対する需要が、区全体では大きく増えないということです。

全体としてみれば、岩槻区のトレンドのほうが全国的な傾向に合致しているように見受けられます。高齢者の実数は大きく増えないけれども、生産年齢人口や年少人口の減少により一人当たりの社会保障負担が増えるというパターンです。

他方、緑区のトレンドは大都市圏で以前から指摘されているパターンで、高齢者の実数が急増することにより、高齢者福祉の施設(病院、老健施設など)に対する需要が急増し、現在の供給キャパシティでは対応できなくなるという点です。

残念ながらこれは「区」単位の推計なので、浦和美園駅周辺地区の2050年の実相は全く違ったものになっているようにも思いますが、ご参考までデータとしてご紹介させていただきました。